キミと桜を両手に持つ

 「藤堂さん、いつもお世話になります」
 
 「望月店長、こちらこそいつもお世話になります。調子はどうですか?」

 望月店長と呼ばれた男性はここの店長で女性は彼の奥さん。夫婦でこの家具屋を営んでいて、ここで売られている家具の大半は地方にある望月さんの実家が営む工場で作られているらしい。

 「作っていただいたウェブサイトのおかげでとても繁盛しています。オンラインショップの売り上げも良くて、この度大阪にもショールームを持つ事になりました」

 「おめでとうございます!」

 藤堂さんと私は声を揃えてお祝いを述べた。

 ウェブサイトは新聞などの広告と違って一定の地域だけでなく世界中に宣伝することができる。藤堂さんはサイト構築に関する技術的なものだけでなく戦略的なマーケティングの知見も持っているので、彼のプロデュースするサイトはどれも集客力の上がるサイトになる。彼の作ったサイトが彼らのビジネスに貢献できていると思うととても誇らしい。

 「今では実家の工場も大きくなり従業員も増えました。何もかも藤堂さんのおかげです。本当にありがとうございました」

 望月さん夫婦は深々と頭を下げた。

 「サイトの方はどうですか?何かお困りの点などはありませんか?」

 「いいえ、何もかも完璧です。あ、そういえば先日藤堂さんからお問合せのあった件ですが、今ご覧になりますか?どうされますか?」

 望月店長が私と藤堂さんを交互に見ながら尋ねた。すると奥さんが

 「あの、奥様は私がご案内しますので、よかったら一緒に…」

 と、藤堂さんに望月さんと一緒に行くように促した。
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