無口な脳外科医の旦那様、心の声(なぜか激甘)が漏れてます!
朝方降った雨が、満開だった桜を散らしてしまった。
雨が止んだ今も厚い雲が空を覆ったままで太陽が頭上に上る時間だというのに薄暗い。
美しいクラッシック音楽が流れる喫茶店【花(はな)和(なご)み】の店内も今日はどこかくすんでいる。
でもこのちょっと重い感じの空気が、これから離婚の話し合いをする夫婦には相応しいかもしれない。
そんなことを考えながら、私はテーブル越しに向かいあって座る無表情の夫――加賀谷(かがや)克(かつ)樹(き)をじっと見つめた。
彼は加賀谷総合病院の若き脳外科医。冷静沈着な性格でオペの腕は一流。合理的な判断と進歩的な考え方で経営面でも期待をされており、将来は院長の座も狙えると言われているエリートだ。
外見も素晴らしく整っている。
百八十センチを超える長身はすらりと引き締まり腰が高く手足が長い。
その完璧なスタイルだけで人目を引くというのに、窓の向こうを眺める横顔は一部の隙もなく整っている。
初めて彼を合わせその美貌を目にしたとき、まるで彫刻のようだと驚いた。
その例えが彼に相応しいと気づいたのは、結婚してすぐだった。
実際彼の表情は作り物と言った方が相応しく感じるほど変化がない。
とにかく無口だし、どんな話題を振っても、いつも興味がなさそうな相槌しか返ってこない、無表情で無感動な人だ。
私は常に、何を考えているのか分からない彼にどう接すればいいのか悩んでいた。どうしたら彼の関心を引けるのか。歩み寄ることができるのか……でも迷い悩む日々はもう終わりだ。
「克樹さん」
私は少し緊張しながら、夫の名前を呼んだ。窓の向こうに向けられていた彼の視線が私に移る。
「私たち、離婚しましょう」
雨が止んだ今も厚い雲が空を覆ったままで太陽が頭上に上る時間だというのに薄暗い。
美しいクラッシック音楽が流れる喫茶店【花(はな)和(なご)み】の店内も今日はどこかくすんでいる。
でもこのちょっと重い感じの空気が、これから離婚の話し合いをする夫婦には相応しいかもしれない。
そんなことを考えながら、私はテーブル越しに向かいあって座る無表情の夫――加賀谷(かがや)克(かつ)樹(き)をじっと見つめた。
彼は加賀谷総合病院の若き脳外科医。冷静沈着な性格でオペの腕は一流。合理的な判断と進歩的な考え方で経営面でも期待をされており、将来は院長の座も狙えると言われているエリートだ。
外見も素晴らしく整っている。
百八十センチを超える長身はすらりと引き締まり腰が高く手足が長い。
その完璧なスタイルだけで人目を引くというのに、窓の向こうを眺める横顔は一部の隙もなく整っている。
初めて彼を合わせその美貌を目にしたとき、まるで彫刻のようだと驚いた。
その例えが彼に相応しいと気づいたのは、結婚してすぐだった。
実際彼の表情は作り物と言った方が相応しく感じるほど変化がない。
とにかく無口だし、どんな話題を振っても、いつも興味がなさそうな相槌しか返ってこない、無表情で無感動な人だ。
私は常に、何を考えているのか分からない彼にどう接すればいいのか悩んでいた。どうしたら彼の関心を引けるのか。歩み寄ることができるのか……でも迷い悩む日々はもう終わりだ。
「克樹さん」
私は少し緊張しながら、夫の名前を呼んだ。窓の向こうに向けられていた彼の視線が私に移る。
「私たち、離婚しましょう」