無口な脳外科医の旦那様、心の声(なぜか激甘)が漏れてます!
「紫前康孝氏の執刀医を務めた加賀谷克樹です。手術は無事成功しました。これより病状の説明と今後の治療方針について説明をさせていただきます」

 記者たちの視線が克樹さんに集中し、フラッシュが光る。
 背筋を伸ばし自信に溢れた表情で立つ克樹さんは輝き、克人さんの存在感はないも同然だ。

「すごい……」

 私は感動して克樹さんを見つめていた。

「羽菜さん、よかったね」

 中村さんも喜んでくれている。

 思いがけない展開を迎えた記者会見は、克樹さんが全ての注目を集めて大成功で幕を閉じたのだった。

「克樹さん、お帰りなさい」

 手術翌日の深夜。私たちはようやく顔を合わすことができた。
 昨夜は克樹さんが術後管理で帰宅出来なかったし、彼が一時帰宅した日中は私が仕事で不在だったからだ。

「ただいま羽菜」

 克樹さんは柔らかく微笑んで私を抱きしめる。

「食事は済ませてきたんでしょう?」
「ああ。羽菜は?」
「私も簡単に食べた。でもオペ成功のお祝いをしたくてオードブルを用意したの」

 克樹さんを引っ張ってリビングに向かう。
 テーブルの上には、胃もたれしないようなものを何種類か綺麗に盛り付けた皿が並んでいる。

「ありがとう」

 克樹さんはうれしそうに言いソファに腰を下ろした。
 私もその隣に並ぶ。
 グラスに注いだのは、念のためノンアルコールドリンクだ。
 軽い音を立ててグラスを合わせて乾杯する

「克樹さんおめでとう!」
「ありがとう。羽菜が支えてくれたおかげだ」
「そんなことないよ。全部克樹さんの努力の結果」

 克樹さんがローテーブルにグラスを置き、真剣な目で私を見つめる。

「オペの技術はたしかに日々の積み重ねの結果かもしれない。でも俺が変わることができたのは羽菜のおかげだ」
「変わる……記者会見のこと?」
「ああ」

 克樹さんが頷いた。

「本当は表に出るつもりはなかったんだ。これまでの俺は名誉や地位に拘りはなかった。ただ祖父のような医者になりたい。その一心だったから。でもそれでは羽菜の夫だと自信を持って名乗れない。羽菜を守ることができない」

 克樹さんがどれほど私を想ってくれているのか、心の声は聞こえないけれど伝わってくる。

「紫前さんの情報をリークしたのは義兄だ」
「えっ……どうしてそんなことを?」

 何もなかったからよかったけれど、もしファンの人たちが殺到して他の患者さんに被害があったら大変なことになるところだった。
 加賀谷総合病院の幹部である克人さんが、どうしてそんな危険な真似を?

「元々義兄は紫前さんを利用して病院の知名度を上げたがっていた。院長と俺が反対したから、強引な手に出たのだろう」
「そんな自分勝手な」
「義兄の功名心を満たす為に無関係な人々を巻き込んだことが許せなかったんだ。だから邪魔をした。義兄と争いたくはなかったが大切なものを守るためながら避けられない」

 克樹さんの目には決意の光が浮かんでいる。

「大切なものって病院のこと?」
「ああ。祖父が残した病院を守るのは幼いころからの夢なんだ。だが一番大切なのは羽菜だ」

克樹さんがそう言って私を抱きしめる。

「……本当に?」

 私は彼の背中に腕を回しながら問い返す。
 聞かなくても彼の気持ちが伝わってくる。
 でも欲張りな私は言葉にして聞きたいのだ。
 そんな私に彼は甘くささやいてくれる。

「ああ、羽菜が一番大切だ」
「他の女性はいなくてもいいの?」
「もちろんだ。羽菜しか要らない。羽菜だけを愛してる」

 以前の彼からは考えられない愛の言葉にときめきが止まらない。

「私も克樹さんを愛してる!」
「羽菜……」

 克樹さんは感極まった声で囁くと、唇を重ねてきた。
 深い口づけを交わし愛を伝え合う。
 私たちの間には確かな絆が生まれている。
 愛情と信頼とたくさんの想いが込み上げて幸せな気持ちに満たされる。
 見つめ合って微笑んで、私は最後の秘密を口にする。

「克樹さん実はね……」

 あなたの心の声が聞こえていました。
 いつも愛情に溢れていた優しい声が。
 彼は驚くだろうけれど、きっと許してくれる。
 

                
 

 
 


 
























































































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