図書館の逢瀬
館内をゆったりと見て回る。
蛍光灯の白い光は柔らかく、本棚は木製で温かみがある。
本の背表紙は色褪せていて、少しボロボロだった。
それだけこの本が色々な人の手に渡り、たくさんの人に読まれ、愛されてきた証拠だ。
(ふふっ。ここの本は一体どれだけの冒険をしてきたんだろう。)
本棚を見上げると、面白そうなタイトルの本が目に入った。
背伸びをして手を伸ばす。
ちょうど同じタイミングで隣から別の手が伸びてきて、コツリとぶつかった。
私は伸ばしていた手を咄嗟に引っ込める。
「ごめんなさい。」
「すみません。」
謝るタイミングも同じで、それがなんだか面白くって、お互い顔を見合わせてクスリと静かに笑う。