図書館の逢瀬
同じタイミングで同じ本を取ろうとしたのは、スーツ姿の男性だった。
男性は少し疲れた顔をしている。
(日曜日もお仕事で大変そうだなぁ。)
なんてことをぼんやりと思う。
男性の方をチラリと見る。
腕には既に数冊の本が抱えられていた。
きっと読書が好きなのだろう。
「はい。」
そう言って男性が私に本を差し出す。
私は慌てて首を横に振った。
「私はいいので!先に読んでください!」
私はたまたまここに立ち寄っただけだ。
雨が降っていなかったら図書館を訪れるつもりはなかった。
しかし、男性は違うかもしれない。
その本を目当てでやって来ていたのだとしたら悪い。