成瀬課長はヒミツにしたい【改稿版】
不気味な影
電話を切った成瀬は、緊張した顔つきのまま真理子を振り返る。
「掲示板に“サワイライトの個人情報が名簿業者に流れている”という趣旨の書き込みがあったらしい。たまたまオンラインショップの顧客が書き込みを見つけて、心配で問い合わせしてきたようだ」
「今度は掲示板ですか!?」
「いよいよ、まずいな……」
成瀬は目元に手を当てると、深く息を吐く。
「さっき、公開フォルダに怪しい点は見つからなかったって言ったよな?」
「はい。確認したのは、この公開フォルダのログです。最近アップされたデータも、WEBサイトに必要なもの以外はありませんでした」
真理子はパソコンを操作してフォルダを表示させた。
成瀬は腕を組むと、じっと画面を見つめている。
「外部から閲覧できる可能性があるフォルダは、この公開フォルダ以外にはないのか?」
成瀬の質問に、真理子は大きく首を横に振る。
「ありません。WEBサーバー以外の社内システムは、全て外部からのアクセスを、シャットアウトするようになっています」
成瀬は唸るように腕を組んだ。
「さっきの常務の話によると、顧客からの問い合わせは数件入っている。他の社員や専務の耳に入るのも時間の問題だな……。俺は先に明彦に連絡を入れる。真理子は別の視点から、アプローチしてくれないか?」
「はい……」
成瀬の顔を見上げながら、真理子は小さく頷いた。
――別の視点……。何か、見落としてるのかも知れない……。
ソファで電話をする成瀬の低い声を聞きながら、真理子はもう一度頭を整理する。
――名簿業者にリストが流れた。ってことは……つまりそれを作った人物がいる……。
真理子は「あっ」と声を上げると、急いでマウスをクリックした。
「どうした?」
真理子の様子に、電話を終えた成瀬が慌てて駆けつける。
「前々から、情報漏洩を防ぐ目的で、個人情報のデータ抽出にはログをつけるようにしています。誰かがリストを作ったなら、そこから追えるかも知れないと思って……」
真理子は手短にそう言うと、パソコンを操作する。
成瀬と共に画面を食い入るように見つめながら、ログを辿っていた真理子の手が、あるところでぴたりと止まった。
ダイレクトメールの発送に関わる部署の名前に交じって、卓也の名前を見つけたのだ。
ふと真理子の脳裏に、卓也のよそよそしい様子が浮かぶ。
「佐伯くんが、社長案件の顧客分析に関わってるって聞きましたけど……」
「あぁ、それは俺も関わってる。だが、もらったデータは、顧客の年齢や性別、居住地域だけで、個人が特定できるものではないぞ……」
成瀬はそう言うと、真理子の横から手を伸ばし、マウスをクリックする。
成瀬が表示したデータを見て、真理子は息をのんだ。
――違う……!
ログに表示されている、卓也がデータ抽出した内容。
それは、完全に個人が特定できる情報のものだった。
「掲示板に“サワイライトの個人情報が名簿業者に流れている”という趣旨の書き込みがあったらしい。たまたまオンラインショップの顧客が書き込みを見つけて、心配で問い合わせしてきたようだ」
「今度は掲示板ですか!?」
「いよいよ、まずいな……」
成瀬は目元に手を当てると、深く息を吐く。
「さっき、公開フォルダに怪しい点は見つからなかったって言ったよな?」
「はい。確認したのは、この公開フォルダのログです。最近アップされたデータも、WEBサイトに必要なもの以外はありませんでした」
真理子はパソコンを操作してフォルダを表示させた。
成瀬は腕を組むと、じっと画面を見つめている。
「外部から閲覧できる可能性があるフォルダは、この公開フォルダ以外にはないのか?」
成瀬の質問に、真理子は大きく首を横に振る。
「ありません。WEBサーバー以外の社内システムは、全て外部からのアクセスを、シャットアウトするようになっています」
成瀬は唸るように腕を組んだ。
「さっきの常務の話によると、顧客からの問い合わせは数件入っている。他の社員や専務の耳に入るのも時間の問題だな……。俺は先に明彦に連絡を入れる。真理子は別の視点から、アプローチしてくれないか?」
「はい……」
成瀬の顔を見上げながら、真理子は小さく頷いた。
――別の視点……。何か、見落としてるのかも知れない……。
ソファで電話をする成瀬の低い声を聞きながら、真理子はもう一度頭を整理する。
――名簿業者にリストが流れた。ってことは……つまりそれを作った人物がいる……。
真理子は「あっ」と声を上げると、急いでマウスをクリックした。
「どうした?」
真理子の様子に、電話を終えた成瀬が慌てて駆けつける。
「前々から、情報漏洩を防ぐ目的で、個人情報のデータ抽出にはログをつけるようにしています。誰かがリストを作ったなら、そこから追えるかも知れないと思って……」
真理子は手短にそう言うと、パソコンを操作する。
成瀬と共に画面を食い入るように見つめながら、ログを辿っていた真理子の手が、あるところでぴたりと止まった。
ダイレクトメールの発送に関わる部署の名前に交じって、卓也の名前を見つけたのだ。
ふと真理子の脳裏に、卓也のよそよそしい様子が浮かぶ。
「佐伯くんが、社長案件の顧客分析に関わってるって聞きましたけど……」
「あぁ、それは俺も関わってる。だが、もらったデータは、顧客の年齢や性別、居住地域だけで、個人が特定できるものではないぞ……」
成瀬はそう言うと、真理子の横から手を伸ばし、マウスをクリックする。
成瀬が表示したデータを見て、真理子は息をのんだ。
――違う……!
ログに表示されている、卓也がデータ抽出した内容。
それは、完全に個人が特定できる情報のものだった。