成瀬課長はヒミツにしたい【改稿版】
その時、バタバタという足音が聞こえ、真理子はビクッと顔を上げる。
叩きつけるようなノック音と共に開いた扉から、にやついた顔が覗いた。
「おやおや、家政婦のお二人さんじゃないか」
専務は目を細めながら楽しそうに笑うと、部屋の中に入ってくる。
その後ろには、同じくにやついた顔の橋本の姿が見えた。
「橋本……!? なぜここに?」
小さくつぶやく成瀬の声に、橋本は「ふん」と鼻で笑う。
「そりゃあこっちのセリフだね。成瀬さんよぉ。大変なことをしでかした社長の顔を拝みに来たんだ。あんたにゃ用はないぜ」
橋本は、吐き捨てるようにそう言うと、顔を背けた。
「まぁまぁ。橋本くん。落ち着きたまえ」
専務はそう言いながら、ソファにドカッと腰を下ろした。
「サワイライトは今や情報漏洩で一躍話題の企業。社長に今後の対応を相談しようかと思ってね」
――情報漏洩で話題!?
真理子は驚いて成瀬と顔を見合わせた。
「これはこれは。専務、お二人さんは、まだご存じないみたいですよ」
楽しそうに肩を揺らす橋本から目線を逸らすと、成瀬が慌ててデスクのパソコンでインターネットを開く。
トップニュースに表示されていたのは、サワイライトの顧客情報漏洩疑いの記事だった。
「そんな……。こんなに早く記事に!?」
真理子は眉を下げると、不安でたまらず成瀬の顔を見上げる。
「うちみたいな中小企業の記事がトップに載るとは、世の中平和なもんですねぇ、専務」
橋本は、これ見よがしに手を広げて嘆くふりをする。
「これこれ、橋本くん。情報漏洩は大問題。口を慎みたまえ」
それをたしなめる専務の口元は、まるで笑いを堪えるかのようだ。
成瀬は「くそっ」と小さく拳を机に打ち付けると、橋本の顔を見た。
「お前がマスコミにリークしたのか……」
成瀬の凄みのある声に、橋本は専務と顔を見合わせると、再び楽しそうに肩を揺らす。
「嫌だなぁ、成瀬さん。フロアは今、顧客からのクレームの電話が殺到してるぜ。リークなんかしなくたって、話題の的ってもんだよ」
「なに!?」
橋本の話を聞くや、成瀬と真理子は社長室を飛び出してフロアに向かった。
フロアに入る前にすでに中からは、鳴りやまない電話の音が漏れ聞こえている。
真理子は成瀬に続いて走って中へと入った。
「成瀬くん!」
常務の声が聞こえ、成瀬と真理子は常務の席に向かう。
社内は鳴り響く電話の音と、動揺した社員たちの声で大騒ぎになっている。
「さっきからずっとこんな状態なんだ。受付にもマスコミが数社、来ているらしい……。さっき社長からも、すぐに戻ると連絡が入ったよ」
常務は疲れた様子を見せると、腰を下ろしながら額に手をやった。
「そっちの状況はどうだい?」
「それが……公開フォルダには怪しい点は見られなくて」
ガックリと肩を落とした常務に見上げられ、真理子は困惑しながら成瀬を振り返る。
「現状、まだ何もつかめていない状況です……」
成瀬が低い声で続けると、常務は大きくため息をつき唸るように腕を組んだ。
叩きつけるようなノック音と共に開いた扉から、にやついた顔が覗いた。
「おやおや、家政婦のお二人さんじゃないか」
専務は目を細めながら楽しそうに笑うと、部屋の中に入ってくる。
その後ろには、同じくにやついた顔の橋本の姿が見えた。
「橋本……!? なぜここに?」
小さくつぶやく成瀬の声に、橋本は「ふん」と鼻で笑う。
「そりゃあこっちのセリフだね。成瀬さんよぉ。大変なことをしでかした社長の顔を拝みに来たんだ。あんたにゃ用はないぜ」
橋本は、吐き捨てるようにそう言うと、顔を背けた。
「まぁまぁ。橋本くん。落ち着きたまえ」
専務はそう言いながら、ソファにドカッと腰を下ろした。
「サワイライトは今や情報漏洩で一躍話題の企業。社長に今後の対応を相談しようかと思ってね」
――情報漏洩で話題!?
真理子は驚いて成瀬と顔を見合わせた。
「これはこれは。専務、お二人さんは、まだご存じないみたいですよ」
楽しそうに肩を揺らす橋本から目線を逸らすと、成瀬が慌ててデスクのパソコンでインターネットを開く。
トップニュースに表示されていたのは、サワイライトの顧客情報漏洩疑いの記事だった。
「そんな……。こんなに早く記事に!?」
真理子は眉を下げると、不安でたまらず成瀬の顔を見上げる。
「うちみたいな中小企業の記事がトップに載るとは、世の中平和なもんですねぇ、専務」
橋本は、これ見よがしに手を広げて嘆くふりをする。
「これこれ、橋本くん。情報漏洩は大問題。口を慎みたまえ」
それをたしなめる専務の口元は、まるで笑いを堪えるかのようだ。
成瀬は「くそっ」と小さく拳を机に打ち付けると、橋本の顔を見た。
「お前がマスコミにリークしたのか……」
成瀬の凄みのある声に、橋本は専務と顔を見合わせると、再び楽しそうに肩を揺らす。
「嫌だなぁ、成瀬さん。フロアは今、顧客からのクレームの電話が殺到してるぜ。リークなんかしなくたって、話題の的ってもんだよ」
「なに!?」
橋本の話を聞くや、成瀬と真理子は社長室を飛び出してフロアに向かった。
フロアに入る前にすでに中からは、鳴りやまない電話の音が漏れ聞こえている。
真理子は成瀬に続いて走って中へと入った。
「成瀬くん!」
常務の声が聞こえ、成瀬と真理子は常務の席に向かう。
社内は鳴り響く電話の音と、動揺した社員たちの声で大騒ぎになっている。
「さっきからずっとこんな状態なんだ。受付にもマスコミが数社、来ているらしい……。さっき社長からも、すぐに戻ると連絡が入ったよ」
常務は疲れた様子を見せると、腰を下ろしながら額に手をやった。
「そっちの状況はどうだい?」
「それが……公開フォルダには怪しい点は見られなくて」
ガックリと肩を落とした常務に見上げられ、真理子は困惑しながら成瀬を振り返る。
「現状、まだ何もつかめていない状況です……」
成瀬が低い声で続けると、常務は大きくため息をつき唸るように腕を組んだ。