惚れさせゲーム
1日彼女の罰ゲーム
〇 自宅・紗菜の部屋(朝)

目覚まし時計がけたたましく鳴り響く。

ピピピピピッ! ピピピピピッ!

布団の中で身じろぎする紗菜。
まどろみの中、昨日の出来事が脳裏をよぎる。

紗菜(モノローグ)
「……最悪」

目を開けると、天井がぼんやりと見えた。

紗菜(モノローグ)
「なんで、こんな罰ゲームを受けることになったんだっけ」

思い出した瞬間、急に目が冴える。
バッと布団をはねのけ、枕元のスマホを手に取る。

画面には、新着メッセージの通知が一件。

桃瀬翼「おはよー! 今日は記念すべき “一日彼女” の日だぞ! 朝からワクワクしてるか?」

紗菜「……」

(してるわけないでしょ)

心の中で即ツッコミを入れつつ、既読をつけるのも癪でスマホを放り投げた。

(落ち着いて。ただの罰ゲーム。ただの……)

そう言い聞かせるのに、なぜか胸の奥が落ち着かない。
深くため息をつき、制服に着替えるために立ち上がった。

---

〇 登校中・通学路**

朝の空気はひんやりとしていて、遠くで蝉の声が響く。
紗菜はいつも通りの道を歩きながら、心を落ち着けようとする。

紗菜(モノローグ)
「今日は、何事もなく、普通に過ごせばいい」

そう思った、その瞬間だった。

「おはよう、彼女さん!」

軽快な声が後ろから響く。
振り向くと、翼が爽やかな笑顔を浮かべて立っていた。

紗菜「……誰が彼女よ」

翼「いやいや、今日は俺の彼女なんだから、ちゃんと自覚持てよ?」

ニヤニヤと笑う翼に、紗菜は心底うんざりした顔をする。

紗菜「バカじゃないの? 罰ゲームでしょ」

翼「そうだけど、ルールはルール。しっかり楽しもうぜ!」

まるで遠足前の子どものようにワクワクしている翼。

紗菜(モノローグ)
「なんでこんなに楽しそうなの……?」

呆れながらも、そのテンションに巻き込まれそうな自分がいた。

「はい、じゃあまずは“彼氏彼女っぽい”ことをしようか」

紗菜「は? 何?」

翼「手、つなごうぜ」

翼は軽く手を差し出した。
冗談めかした口調だけど、どこか本気のようにも見える。

紗菜「……はぁ!? 何言ってんのよ!! 絶対イヤ!!!」

翼「ちぇー、ノリ悪いなあ」

ふざけたように笑うが、すぐに肩をすくめる。

「ま、いっか。じゃあ学校まで送ってあげるよ、俺の彼女さん」

紗菜「……だから、彼女じゃないってば!」

そう言いながらも、翼は勝手に紗菜の隣に並んで歩き始める。
朝の光の中、二人の影が並んで伸びていた――。
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