惚れさせゲーム
〇 教室(朝)

教室に入ると、すでに半分以上の生徒が席についていた。
夏の日差しが窓から差し込み、ざわざわとした空気が広がっている。

「おはよ、紗菜!」

席に着く前に、クラスメイトの友人が笑顔で声をかけてきた。

紗菜「おはよう」

普段と変わらぬ挨拶を返そうとした、その瞬間――

翼「おはよー! 俺の彼女さん!」

背後から翼の大きな声が響いた。

……一瞬で教室の空気が凍りつく。

紗菜「は!?!?」

驚いて振り向くと、翼はいつもの軽い笑みを浮かべながら、堂々と教室の入り口に立っていた。
まるで“宣言”するかのような声に、周りの生徒たちの視線が一斉に紗菜へと集中する。

「えっ!? ちょっと待って、どういうこと!?」
「紗菜が……彼女!? まじ!?」
「学年トップ同士で付き合ってるの!?」

瞬く間に教室がざわめき始める。

紗菜「ち、違う!!!」

慌てて否定するが、翼はまるで意に介さず、余裕たっぷりに紗菜の隣の席へと腰を下ろす。

翼「いやいや、罰ゲームとはいえ、今日は俺の彼女なんだから、しっかり“それらしく”振る舞ってもらわないと困るな~?」

ニヤリと笑って、机に頬杖をつく翼。
その態度は、まるで紗菜の反応を楽しんでいるかのようだった。

紗菜「だから、それを大声で言うなって言ってるの!!!」

バン!と机を叩くが、すでにクラスの興味は完全に二人へと向けられていた。

「えー、本当に付き合ってるわけじゃないの?」
「でも翼ってモテるし、いいじゃん?」
「むしろお似合いじゃない?」

クラスメイトたちは、面白がるようにヒソヒソと囁き合う。
そのたびに、紗菜のこめかみにじわじわと頭痛が広がる。

紗菜(モノローグ)
「最悪……これじゃ授業どころじゃない……」

翼「じゃあ、今日一日よろしくね、紗菜?」

ふざけた調子でウインクをする翼。

紗菜「……誰か助けて」

紗菜は頭を抱え、ため息をついた――。
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