惚れさせゲーム
数学バトルと意地っ張りなプライド
〇 学校・教室(数学の授業)

授業が始まり、教室は静寂に包まれる。
教師が黒板に数式を書きながら、説明を続ける。

教師 「では、この問題を解いてみよう。座標平面上で……」

数式が次々と黒板に書き込まれ、生徒たちはそれぞれノートに向かう。
紗菜も淡々とペンを走らせていた。

紗菜(モノローグ)
「……いつも通り解けばいい」

しかし、その静けさを破るように、低い声が耳元に忍び寄る。

翼(小声)「なあ、三峰。今から俺の挑戦、第二弾いくぞ」

紗菜(小声)「は?」

ちらりと横を見ると、翼がニヤリと笑いながらこちらを見つめている。

紗菜(モノローグ)
「また始まった……!」

無視しようとするが、翼はノートの端をトントンと指で叩く。

翼(小声)「この問題、俺と勝負しようぜ」

紗菜(小声)「勝負?」

翼「どっちが早く正解を出せるか」

紗菜「くだらない」

翼「へぇ、逃げるの?」

紗菜 「……っ!」

挑発されると、どうしても引き下がれなくなる。
紗菜は短く息を吐き、ペンを強く握った。

紗菜(小声) 「いいわ。すぐに終わらせてあげる」

翼 「おっ、いいね。その自信」

こうして、密かに数学バトルが始まった。

---

〇 教室(数学バトル中)

黒板には、複雑な数式が並ぶ。
教室全体が静まり返る中、翼と紗菜の間には妙な緊張感が漂っていた。

紗菜(モノローグ)
(まず、この関数の導関数を求めて……いや、それよりも先に……)

ペンを滑らせ、計算を進める。
しかし、隣を見ると、翼もまた真剣な表情で問題に取り組んでいた。

紗菜(モノローグ)
「……思ったより速い」

「焦りが生まれる。負けるわけにはいかない。」
「負けたら……いや、負けるなんてありえない。」

翼(小声)「お先ー」

ノートにペンを置き、余裕の笑みを浮かべる翼。
そこには、すでに答えが書かれていた。

紗菜(モノローグ)
「……嘘でしょ」

信じられない気持ちで、自分の途中計算を見つめる。あと少しだったのに――。

翼「ま、俺もやる時はやるんで」

紗菜「……調子に乗らないで」

悔しさを滲ませながら、そっぽを向く紗菜。
しかし、翼はさらに追い打ちをかけるように言った。

翼「なあ、三峰」

紗菜「何よ」

翼「今、ちょっとだけ俺のこと意識した?」

紗菜「はぁ!? してない!」

即座に否定する紗菜。だが、翼はニヤニヤと笑うだけ。

翼 「へぇ~? 本当に~?」

紗菜(モノローグ)
(……くっそ、こいつ……!)

(こんなの、絶対に負けるもんですか!)

悔しさを押し殺し、次こそ勝ってやると心の中で誓うのだった――。
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