由良くん、愛さないで
╰𒀭ॱ˖
わたしは私立十紀和学園へ編入した。
理由は言うまでもない。
この高校に、今回のターゲットである楪葉由良が通っているのだ。
任務を与えられたあの日、楪葉由良の詳細な情報が綴られたファイルを渡された。
年齢は十七歳。
両親は大手企業のグループ会社の社長。
身分は上流階級に位置する御曹司。
……ということは、彼が通う私立十紀和学園は学費がありえないほどに高い。
この学園にはわたしのような貧乏人は一人もおらず、お嬢様や御曹司だけが通うことのできる超有名な名門校。
もちろん、言うまでもなく偏差値も国内トップクラスを争う人々が集う場所だ。両親を亡くし、これから一人で生きていく術を身につけるために勉強だけは人一倍努力してきた。
だから学力は申し分ないはず。問題は、十紀和学園に編入するための莫大な費用。
学費はどうするのかというと、わたしの勤める殺し屋グループの主様が全額支払ってくれるらしい。
『まずは一ヶ月間、彼の動向を観察し、少しずつ近づいてください。二ヶ月で信頼のある友人関係を築ければ大したものでしょう。その時は月給を二倍にします。───あすかさん。今回も私の期待に応えてくださいね』
主様の声が脳内で再生される。
『……二ヶ月、ですか』