由良くん、愛さないで
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わたしは私立十紀和学園へ編入した。
理由は言うまでもない。
この中学校に、今回のターゲットである楪葉由良が通っているのだ。
任務を与えられたあの日、それとともに楪葉由良の情報を渡された。
年齢は十五歳。
両親は大手企業のグループ会社の社長。
身分は上流階級に位置する御曹司。
……だから、彼が通う十紀和学園は学費がありえないほどに高い。
この学園にはわたしのような貧乏者は一人もおらず、お嬢様や御曹司が通う超有名な名門校。
学費はどうするのかというと、わたしの勤めるグループの主様が全額支払ってくれるらしい。
『まずは一ヶ月間、彼の動向を観察し、少しずつ近づいてください。二ヶ月で信頼のある友人関係を築ければ大したものでしょう。その時は月給を二倍にします。───あすかさん。今回も私の期待に応えてくださいね』
主様の声が脳内で再生される。
わたしは気を引き締めて、厳正さを醸し出している立派な校門をくぐり抜けた。