由良くん、愛さないで
だけど別に日常生活で困ることは何もない。
「皆さん、そろそろ春の舞踏会が迫ってきています。皆さんは本日から中学二年生です。普通科目の授業だけでなく、お作法やテーブルマナー、ダンスに外国語教育など様々なことが待ち受けています。ほとんどが各家庭で既になされていることかと思いますが、この学園では自分の実力を発揮する機会が山程あります。ぜひ頑張ってください」
先生がそう言い終わって、それでは朝のホームルームを終了しますと言って教室から出ていく。
お作法やテーブルマナー、ダンス……それに外国語。
この教室にいるお嬢様や御曹司はもう既に完璧なのか。
これは、努力しなければいけない。
そう覚悟を決めていたわたしの元に、ある二人の女子生徒が近づいてきた。
「橋呉さん、はじめまして。安堂祐奈と申します。これからよろしくね」
「雅緋姫と申します。橋呉さん、本日からよろしくお願いいたしますね」
安堂、雅緋……。
それはどちらも聞いたことのある名前だった。
安堂さんは世界中に企業を構える大手眼鏡会社の娘で、雅緋さんは日本一の人気を誇る雅緋庵の娘。