由良くん、愛さないで
想像していたことだけど、改めてこの学園の凄さを思い知る。
ここまで有名な大企業の社長の跡取りたちがこの学園に集結しているのだ。
そんな中、わたしはというと───
「橋呉って、あまり耳にしない名字よね。橋呉さんのご両親はどんな企業を構えている方々ですの?」
雅緋さんの質問に、わたしは動揺を悟られないほどに息を呑んだ。
ここは、なんて返事をするのが最善?
主様にはそこまで細々としたアドバイスをいただいていない。
ということは、あとはわたしの力でなんとかしろということ。
わたしは高速で頭を働かせて、口を開いた。
「───実は、わたしの両親はわたしが幼い頃に他界いたしまして。今は大手企業の社長である叔父の元で養ってもらっています」
半分は本当のこと、そしてもう半分は真っ赤な嘘だ。
わたしの言葉に、二人が息を呑んだ。