由良くん、愛さないで


╰𒀭ॱ˖


お昼休み。

新しい環境で四時間の授業を受け終え、廊下を歩いていたわたしの前方からたくさんの教材を抱えた男子生徒が小走りでどこかへ急いでいた。


「……っうわ!!」


そんな声が聞こえたかと思うと。

数メートル先で、その男子生徒が何もないところで転び、手に持っていた教材をすべて廊下にばらまいた。

そのまま無視して通り過ぎることもできたけれど、周囲の目があるからさすがにそれはできない。


わたしは廊下に散らばった教材を手に取りながらその男子生徒に近づいた。


「これ、どうぞ」


慌てて落とした教材を拾っていた男子生徒がわたしの声を聞き、顔を上げる。

長い前髪の隙間から気弱そうな目が覗いている。


ずり落ちた眼鏡をクイッと上げた彼は「あっ、ありがとうございます!」とペコペコとお辞儀をし、教材を受け取った。


そしてその男子生徒が去っていき、歩を進めようとしたその時。


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