悪女だってヒロインになりたいんです。
美亜の顔を見たらカッと頭に血が上り、美亜の肩を強く掴んでいた。


「痛いなー。いちいち言わないとわからないの?」


肩を掴んでいた手を美亜に雑に振り払われる。


「せっかくちょっと友達ができたからって調子に乗ってる茉莉花に、少し痛い目に遭わせようと思ってわざわざ矢印の方向まで変えたのに、棗くんが助けちゃうんだもん。まあついていったおかげでいい話も聞けたし?あの女の子って茉莉花のことでしょ?昔入院してたことあるって言ってたもんね。それなら利用するしかないじゃない。棗くんの初恋の相手は私。物語はこうでなくっちゃね」


あははと楽しそうに笑っている美亜に、怒りなんてとっくにしぼんでいた。

代わりに出てきた感情は、「ああ、またか」といった諦めだった。

また美亜は私から大切なものを奪っていくんだ。


「茉莉花は悪女なの。幸せなハッピーエンドなんてないに決まってるでしょ?」


私はこの物語の悪女だから。

だから、美亜を輝かせるためにも、私の綺麗な思い出なんて捨てなければいけないの?


「…いい加減にしてよ」

「…は?」


きっと棗は美亜の言葉を信じて、これからどんどん仲良くなっていくのだろう。

いくら女子に冷たい冷酷王子である棗でも、ずっと探していた初恋の相手が目の前に現れたんだから美亜を大切にするに決まっている。

ヒーローはヒロインと結ばれるのが物語のお約束だから。
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