悪女だってヒロインになりたいんです。
なぜ棗がそんなことを言ってくるのかわからなかったし、違うと今更言ったところで何も変わらないとわかっているはずなのに棗には信じて欲しくて気づいたらそう否定していた。


「そうか。ならこんなところで泣いてないで、堂々としてればいいだろ。おまえらしくない」

「…信じて、くれるの…?」

「おまえがそう言ったんだろ?俺は話したこともないような他の女の言葉よりも、まだ話したことのある隣の席のおまえを信じる。おまえのことも今なら少しは知ってるつもりだし」


私の言葉を信じてくれる人となんてもう二度と出会えないと思っていた。

それなのに高校に入って、噂を鵜呑みにしないでありのままの私を見てくれる和佳だけではなく、関わっている時間が少し長いという理由だけで私のことを信じてくれる人がここにもいたなんて思いもしなかった。


「周りには本当のこと言わなくていいのか?」

「いいよ。美亜の機嫌損ねる方が厄介だし、和佳や棗だけでも信じてくれるならそれでいい」


たった一人信じてくれる人がいるだけで、こんなにも心が救われるなんて知らなかった。

何よりも好きな人が信じてくれると言うのだ。

それ以上望むものは何もない。


…いや、あと一つだけ、どうしてもこれだけは棗に伝えたい。


「…あのさ、棗が言ってた病院で出会った女の子なんだけど…」
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