悪女だってヒロインになりたいんです。
熱い頬を両手でおさえながら、わけがわからなくて棗の背中を見つめる。

心配…してくれたのかな?

とりあえず怒っていたわけではないことに安堵しつつ、触れられた部分が熱くて嬉しくて、もう何も考えられなかった。


棗は今、何を考えているんだろう…?



「七瀬さんは学校で仲がいい子とかいないの?」

「え?」


今日は雨だからかお客さんが全く来なくて、坂上くんと店内の掃除をしながら他愛もないことを話していた。


「店長にさっき従業員割引券もらったでしょ?あれ、友達とか家族に配ると喜んでくれるから七瀬さんも仲がいい友達がいるならあげたらどうかなって思って」


たしかにさっき、来て早々店長さんから従業員割引券の店内飲食30%オフクーポンを大量にもらった。

しかしお客さんとしてプライベートに来るのは少し気が引けると考えていたため、そのような使い道もあることになるほどと感心する。


「友達は一人だけいるの。私、学校では悪女だから誰も近づこうとしてこないんだけど、その子だけは唯一偏見で私を見てくることはなくてありのままの私を受け入れてくれる子だから」

「悪女?七瀬さんが?学校の生徒たちは見る目がないんだなぁ」


ふふっと小さく笑っている坂上くんに、こんなことを言ってくれる人がまだここにもいたことに少しだけ嬉しさを感じる。
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