眠り王子と夢中の恋。
「美夜、大丈夫⁉︎ しっかりしろ」

兄の声で現実に引き戻された。

気づくと、私は頭を抱えてソファの上でうずくまっていた。

目の前には兄がかがみ込んで私の肩に手を置いている。

「大丈夫……」

今までの、全ての辻褄が合うような気がした。

あの日、初めて夢の世界に行った日、頭痛とともに流れてきた記憶は自分のものだった。

いや、厳密に言うと前の『鈴崎美夜』の記憶だった。

それはずっと忘れていた、でも思い出さなければならなかった記憶。
忘れてはいけなかった記憶。

一緒にいたのは小さい頃からの幼なじみでもある玲音だった。

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