眠り王子と夢中の恋。
「覚えてるか?その次の日に母さんが家にいただろ。あれは玲音くんの見舞いに行くためだったんだ。
俺は当日に行ったんだけど、美夜は毎年連れて行ってなかったから」

頭痛で学校を休んだ次の日、母と兄の途切れ途切れの言葉から、私は前日が父の命日だったと勘違いした。

でも、あの時母と兄が悲しそうな顔をしたのは……

「美夜は事故のことなんて全部忘れてたからさ、美夜にはなるべく事故関係のことは話さないようにしてたんだ」

今まで疑問に思っていた事が全て片付けられていく。

「私は1ヶ月に1回玲音のお見舞いに行ってるんだけど、全く玲音の状態は変わらないんだよね」

「変わらないって……」

「いつも寝てるように横たわってるの。でも意識は復活しないし目は覚めないし」

玲音は願っているのに。
現実に戻りたいって。

ずっとずっと、切ない顔をしながら祈っているのに。

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