猫は、その恋に奇跡を全振りしたい
第四章 おかえりなさいとただいま
放課後、猫巡り部の部室に行くと、何故か鹿下くんがいた。
「……どうして、鹿下くんがここにいるの?」
「決まっているだろ」
鹿下くんは少し間を空けて、小さく息を吸い込んで言う。
「猫巡り部に用があったからだ。猫巡り部は、悩みがある人の願いを叶えてくれるんだろ?」
「そ、そうだけど……」
鹿下くんに真剣な眼差しで見つめられ、迷う間もなく答えてしまう。
「俺の望みは、安東の未練を晴らしてほしいだ」
「渚くんの未練を!?」
鹿下くんのまっすぐな言葉は、わたしの瞳を揺らがせるのに十分すぎた。
言いようのない不安が首をもたげてくる。
「おまえには悪いけれど、俺は本気だ。このまま、麻人をほっといたら、本当に安東になってしまうかもしれないもんな」
「むっ、渚くんは渚くんだよ! そんな願いは引き受けられません!」
わたしは両こぶしを突き上げて、一息でそうまくし立てた。
未練を晴らしたら、渚くんが消えてしまう。
まさに崖っぷちの状況だ。
それなのに、こんな厄介な願い事にかまけている余裕などない。
「即答かよ! おまえの安東への情熱はなんなんだ!?」
ばっさり切り捨てたものの、鹿下くんの困ったような、呆れたような顔はどうも納得いかない。
そんなわたしたちのやり取りに、井上先輩たちの生温かい視線が集まる。
「ふむふむ。猫巡り部部長の私としては、あなたの悩みをすぱっと解決したいけれど。やっぱり、できないこともあるわけだし。ねえ、桐谷さん」
「はい」
井上先輩に同意を求められ、わたしは大きくうなずいた。
もちろん、妥協じゃない。
わたしは今、確かに本音で息をしている。
「それに相談できることは、『猫に関すること』だけだったりするんだよね」
相談を受ける内容は、猫に関することだけに限定にしている。
そうしないと、際限がなくなってしまうからだ。
「だから、猫とは無関係の……安東くんがいなくなるような望みは、叶えられないかな」
井上先輩がそう補足すると、鹿下くんはふっと目を逸らした。
そして、少し思案すると、改めて切り出した。
「……どうして、鹿下くんがここにいるの?」
「決まっているだろ」
鹿下くんは少し間を空けて、小さく息を吸い込んで言う。
「猫巡り部に用があったからだ。猫巡り部は、悩みがある人の願いを叶えてくれるんだろ?」
「そ、そうだけど……」
鹿下くんに真剣な眼差しで見つめられ、迷う間もなく答えてしまう。
「俺の望みは、安東の未練を晴らしてほしいだ」
「渚くんの未練を!?」
鹿下くんのまっすぐな言葉は、わたしの瞳を揺らがせるのに十分すぎた。
言いようのない不安が首をもたげてくる。
「おまえには悪いけれど、俺は本気だ。このまま、麻人をほっといたら、本当に安東になってしまうかもしれないもんな」
「むっ、渚くんは渚くんだよ! そんな願いは引き受けられません!」
わたしは両こぶしを突き上げて、一息でそうまくし立てた。
未練を晴らしたら、渚くんが消えてしまう。
まさに崖っぷちの状況だ。
それなのに、こんな厄介な願い事にかまけている余裕などない。
「即答かよ! おまえの安東への情熱はなんなんだ!?」
ばっさり切り捨てたものの、鹿下くんの困ったような、呆れたような顔はどうも納得いかない。
そんなわたしたちのやり取りに、井上先輩たちの生温かい視線が集まる。
「ふむふむ。猫巡り部部長の私としては、あなたの悩みをすぱっと解決したいけれど。やっぱり、できないこともあるわけだし。ねえ、桐谷さん」
「はい」
井上先輩に同意を求められ、わたしは大きくうなずいた。
もちろん、妥協じゃない。
わたしは今、確かに本音で息をしている。
「それに相談できることは、『猫に関すること』だけだったりするんだよね」
相談を受ける内容は、猫に関することだけに限定にしている。
そうしないと、際限がなくなってしまうからだ。
「だから、猫とは無関係の……安東くんがいなくなるような望みは、叶えられないかな」
井上先輩がそう補足すると、鹿下くんはふっと目を逸らした。
そして、少し思案すると、改めて切り出した。