猫は、その恋に奇跡を全振りしたい
*
世界が変わるきっかけというのは、いつ訪れるかは分からない。
少なくとも、今日、猫巡り部に新たな部員が入ってくるなんて、思いもしなかっただろう。
「うん。よし、これで入部完了だよ! じゃあ、自己紹介もよろしくね!」
目の前の用紙を奪うようにして手にした井上先輩が、嬉しそうに声を弾ませる。
ひらひらと揺れる用紙には、書き終えたばかりの鹿下くんの名前が記されていた。
「改めて、1年3組の鹿下克也です。よろしくお願いします」
猫巡り部の入部手続きを済ました後、鹿下くんはぺこりと頭を下げた。
「こちらこそ、よろしくね。私は三年生の井上つむぎ。一応、猫巡り部の部長だよ」
井上先輩は明るい声を上げる。
「鹿下くんは、安東くんと桐谷さんは知っているよね」
「はい」
井上先輩の問いかけに、鹿下くんは眉をハの字にしながらもうなずいた。
「あとのメンバーは……」
井上先輩が弾んだ足取りで、他の部員を紹介していく。
その明るい声を聞きながら、わたしは何とはなしに部室を見回した。
授業では使われていない一室を利用した猫巡り部の部室は、様々なもので溢れ返っている。
猫に関する品物やパソコン。
中には一体、何に使うんだろうと思ってしまうものも、ちらほらある。
それでも、このぜんぶが、猫巡り部にとっては大切なもので。
ここにある全てが、猫巡り部にとって欠かせないものだった。
「鹿下くんって突然、猫巡り部に入部したり、何を考えているのか、よく分からない」
少し不機嫌そうに言うと、渚くんは目を丸くした。
「冬華、ちょっといいかな?」
「うん」
唐突な問いかけに驚きながらも、迷うことなくうなずいた。
「ああ見えて、克也はいい奴だよ」
「……えー、そうかな? どこがそんなにいいの? まさか、雨の日に捨て猫を拾う姿を見たからとか言わないよね」
「そうだよ」
そう息巻くわたしに、渚くんはほのかに微笑んで答えた。
「ええっ!? 意外かも」
その答えを予想していたのだろう。
渚くんは苦笑している。
世界が変わるきっかけというのは、いつ訪れるかは分からない。
少なくとも、今日、猫巡り部に新たな部員が入ってくるなんて、思いもしなかっただろう。
「うん。よし、これで入部完了だよ! じゃあ、自己紹介もよろしくね!」
目の前の用紙を奪うようにして手にした井上先輩が、嬉しそうに声を弾ませる。
ひらひらと揺れる用紙には、書き終えたばかりの鹿下くんの名前が記されていた。
「改めて、1年3組の鹿下克也です。よろしくお願いします」
猫巡り部の入部手続きを済ました後、鹿下くんはぺこりと頭を下げた。
「こちらこそ、よろしくね。私は三年生の井上つむぎ。一応、猫巡り部の部長だよ」
井上先輩は明るい声を上げる。
「鹿下くんは、安東くんと桐谷さんは知っているよね」
「はい」
井上先輩の問いかけに、鹿下くんは眉をハの字にしながらもうなずいた。
「あとのメンバーは……」
井上先輩が弾んだ足取りで、他の部員を紹介していく。
その明るい声を聞きながら、わたしは何とはなしに部室を見回した。
授業では使われていない一室を利用した猫巡り部の部室は、様々なもので溢れ返っている。
猫に関する品物やパソコン。
中には一体、何に使うんだろうと思ってしまうものも、ちらほらある。
それでも、このぜんぶが、猫巡り部にとっては大切なもので。
ここにある全てが、猫巡り部にとって欠かせないものだった。
「鹿下くんって突然、猫巡り部に入部したり、何を考えているのか、よく分からない」
少し不機嫌そうに言うと、渚くんは目を丸くした。
「冬華、ちょっといいかな?」
「うん」
唐突な問いかけに驚きながらも、迷うことなくうなずいた。
「ああ見えて、克也はいい奴だよ」
「……えー、そうかな? どこがそんなにいいの? まさか、雨の日に捨て猫を拾う姿を見たからとか言わないよね」
「そうだよ」
そう息巻くわたしに、渚くんはほのかに微笑んで答えた。
「ええっ!? 意外かも」
その答えを予想していたのだろう。
渚くんは苦笑している。