猫は、その恋に奇跡を全振りしたい
「鹿下くんのお父さんは、保護猫カフェを経営している。猫巡り部の活動を活発化させる最善手だと思うぞ」
「保護猫カフェ……。どんな感じなのかな?」

井上先輩のアドバイスに、わたしはうーんと思い悩む。

「……そうだな。猫カフェのように、入場料や飲食代を支払うことで、自由に猫と遊ぶことができる場所だ。ただひとつ違うのは、カフェ内にいる猫は『保護した猫』ということだな」

鹿下くんが補足するように、保護猫カフェの説明を列挙する。

「元野良猫だったり、飼い主が手放したりと、いろんな事情から飼い主のいない猫が過ごしている。だから、保護した猫の里親を募集しているんだ。それに、保護猫カフェに遊びに行くだけでも支援になる」
「支援に?」

意外な事実に、わたしは目を瞬かせた。

「支払った入場料や飲食代の一部が、猫のごはん代や医療費などになるんだ。保護猫カフェで売られているグッズの購入で支援することもできる」
「そうなんだ」

保護猫カフェの実態に、わたしは改めて、圧倒される。

「猫を飼えなくても気軽に遊びに行けて、しかも保護した猫の支援になるのが『保護猫カフェ』……」

わたしが確認すると、鹿下くんはうなずいた。
保護猫カフェのすごさに思わず、感嘆の吐息をこぼしていると。

「まあ……」

鹿下くんはそれよりもと、わたしの目を促した。

「そもそも、猫のために何かをしたいというのなら、猫神祭りで猫をモチーフにしたスイーツや猫グッズなどを売って、その売り上げで保護した猫を支援したらいいだけの話だろ」
「むっ……」

投げやりにため息をついた鹿下くんの態度が正直、気にくわない。
だけど、その結論に過剰反応したのは井上先輩だ。

「なるほどー!! 確かに、それは名案にゃー!!」

井上先輩が跳び跳ねるように、うんうんとうなずいた。
心なしか、猫耳がぴこんと愛らしく揺れる。

「ではでは、保護猫カフェのことも知ることができたし、ここで重大発表!!」

そう自身を鼓舞してから、井上先輩は華麗にくるりと回る。

「猫巡り部の活動を盛り上げるために、猫神祭りでは急遽、『保護猫カフェ』をすることにしたにゃー。もちろん、その売り上げは保護した猫ちゃんの支援に回るから、みんな、張り切っていこー!!」

井上先輩は大層、ご満悦に言ってのけた。

「保護猫カフェに詳しい鹿下くん。猫神祭りに向けて、最大限のご協力をよろしくにゃー!!」
「うげぇ……」

これからも、鹿下くんの苦労は続きそうだ。
だけど、それも……。

「まあ、これも猫のためになるなら、悪くはない……かな」
「そうだね」
「うん。保護猫カフェ、楽しみだね」

にやり。ふわり。にっこり。三者三様の笑顔が交錯した。
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