猫は、その恋に奇跡を全振りしたい

第七章 猫だけがその奇跡の先を知っている

猫神祭り当日。
わたしたち、猫巡り部は夕暮れの神社を訪れていた。
祭囃子が空に響く。
厳かに、楽しげに。
それより何より賑やかなのは、屋台をそぞろ歩く人々の華やかな仮装行列と、楽しげな談笑の声。
屋台からの呼び込みの声に、耳にしただけでゴクリと喉が鳴るような、何かの焼ける美味しそうな音。
それにふらりと引き寄せられるように、猫のおばけの格好をした子どもたちが屋台の一つへと近づいていた。
祭りの賑わいは、まだまだ始まったばかり。

年に一度のハロウィンともに開催される猫神祭り。

今日は思いっきり祭りを楽しもうと、町の人たちは思い思いに羽を伸ばしていた。

「すごーい!」

目の前に広がる光景を、わたしたちの誰が想像し得ただろうか。
みんながみんな、息を呑み、言葉を忘れ、光へ魅入られた。
町は提灯が灯す淡い光に彩られ、わたしたちを歓待した。
猫神祭り、かくも賑やかで華々しい。

「渚くん、どうかな?」

魔女の衣装に身を包み、お菓子が入ったカゴをぱたぱたと跳ねさせながら、わたしは隣を歩く渚くんの肘に抱きつく。
その拍子に、猫耳カチューシャがぴこんと跳ねる。

「魔女の格好、似合っているよ」

渚くんからの賛辞に、わたしは舞い上がった髪のほつれ毛を直しながら淡く笑んだ。

「保護猫カフェ、思っていたよりも人気だな」
「そうだね。これをきっかけに、保護猫カフェのことを知ってもらえたら嬉しい」

わたしたち、猫巡り部は、保護猫カフェをイメージした屋台をしていた。
ショーケースには、福を招く猫スイーツや肉球を模したスイーツなど、色とりどりの猫をモチーフにしたスイーツがずらりと並んでいる。
猫グッズ売場もあり、意外にも大盛況だ。
仮設テントで作られた猫部屋には、たくさんの猫たちが楽しそうに遊んでいる。
実際に飼うよりもハードルが低いのもあってか、噂を聞きつけた町の人たちが集まっていた。

「にゃんにゃん~。猫フェスティバルにゃ!」

井上先輩の歌う猫ソングは、星屑を散らすようなまぶしさで辺りを華やがせる。
すると、井上先輩の周りに集まっている猫たちも、にゃーにゃーにゃんにゃん大合唱。
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