猫は、その恋に奇跡を全振りしたい
「猫神祭りはいつも、不思議でいっぱいだ」
「ほんとだね」
穏やかに笑う渚くんとともに歩むひととき。
その奇跡を――わたしはじっくりと噛み締める。
先のことは分からないが、どんな未来でも思い出はきっと永遠だ。
だからこそ、この時間が少しでも長く続いてほしい。
「…………」
だけど、どうしよう。
さっきから心臓がうるさい。
わたし、知っている。
痛いほど分かる、この気持ちは……。
実は……渚くんに尋ねたいことがいくつもあった。
「……冬華。何か、聞きたいことがある?」
「えっ?」
渚くんの方からそう告げたあたり、やはり今日は特別な風でも吹いているのかもしれない。
そう思うと、少し不思議な感じがする。
わたしはいささか張りつめた顔で言った。
「その……渚くん。あれから、同じ夢を見ることはなくなったね……」
「やっぱり、夢魂の力は、猫神様の奇跡だったのかもしれないな」
儚くつぶやく彼に、わたしの胸は一つ跳ねた。
「渚くんと……いつも夢の中で会えていたから……。目を覚ました時、少しさびしく感じる……」
「……俺もだよ」
ぽう、と胸の中に育まれる温かさ。
「夢魂の力はなくなったけど、今は渚くんに会おうと思ったら、いつでも会えるから嬉しい」
「俺も、冬華に会えて嬉しいよ」
言葉一つ交わすたび、雲が晴れた。
太陽が顔を見せた。
わたしは胸に手のひらを添え、変わらぬ確信に深くうなずく。
やっぱり、渚くんのことが好き。
渚くんのことが大好きだ。
話し足りないことはたくさんある。
たとえ、今日を一緒に過ごしていたとしても……。
明日もどこかで会えるとしたって、尽きることはない。
胸に抱く、この想いと同じく。
こんなにも、世界がまぶしい。
渚くんとなら、どこまでも世界の果てにだって行けるような気がした。
とりとめのないことをあれこれと話しながら歩いていたら、行く手にたこ焼きの屋台が見えた。
「あっ……! 見て見て、渚くん! 猫型のたこ焼きがあるよ!」
客足が少なくなった隙に、わたしは渚くんとともにたこ焼きの屋台に行った。
浮き立つ心のまま、たこ焼きを買う。
そして、屋台の間に設けられた、休憩所のベンチに並んで座る。
「猫型のたこ焼き、おいしいね」
「うん。かわいくて、すごくおいしい」
熱々のたこ焼き。
わたしたちの小さな会話は、幸せそうに花を咲かせる。
「このたこ焼き、どうやって作って――あれ?」
その時、わたしの視界の端を、不思議な印象の猫が一匹歩いていったような気がした。
とんがり帽子をかぶった猫。
だけど、視線を向けた時には、その猫の姿はもう影も形もない。
「ほんとだね」
穏やかに笑う渚くんとともに歩むひととき。
その奇跡を――わたしはじっくりと噛み締める。
先のことは分からないが、どんな未来でも思い出はきっと永遠だ。
だからこそ、この時間が少しでも長く続いてほしい。
「…………」
だけど、どうしよう。
さっきから心臓がうるさい。
わたし、知っている。
痛いほど分かる、この気持ちは……。
実は……渚くんに尋ねたいことがいくつもあった。
「……冬華。何か、聞きたいことがある?」
「えっ?」
渚くんの方からそう告げたあたり、やはり今日は特別な風でも吹いているのかもしれない。
そう思うと、少し不思議な感じがする。
わたしはいささか張りつめた顔で言った。
「その……渚くん。あれから、同じ夢を見ることはなくなったね……」
「やっぱり、夢魂の力は、猫神様の奇跡だったのかもしれないな」
儚くつぶやく彼に、わたしの胸は一つ跳ねた。
「渚くんと……いつも夢の中で会えていたから……。目を覚ました時、少しさびしく感じる……」
「……俺もだよ」
ぽう、と胸の中に育まれる温かさ。
「夢魂の力はなくなったけど、今は渚くんに会おうと思ったら、いつでも会えるから嬉しい」
「俺も、冬華に会えて嬉しいよ」
言葉一つ交わすたび、雲が晴れた。
太陽が顔を見せた。
わたしは胸に手のひらを添え、変わらぬ確信に深くうなずく。
やっぱり、渚くんのことが好き。
渚くんのことが大好きだ。
話し足りないことはたくさんある。
たとえ、今日を一緒に過ごしていたとしても……。
明日もどこかで会えるとしたって、尽きることはない。
胸に抱く、この想いと同じく。
こんなにも、世界がまぶしい。
渚くんとなら、どこまでも世界の果てにだって行けるような気がした。
とりとめのないことをあれこれと話しながら歩いていたら、行く手にたこ焼きの屋台が見えた。
「あっ……! 見て見て、渚くん! 猫型のたこ焼きがあるよ!」
客足が少なくなった隙に、わたしは渚くんとともにたこ焼きの屋台に行った。
浮き立つ心のまま、たこ焼きを買う。
そして、屋台の間に設けられた、休憩所のベンチに並んで座る。
「猫型のたこ焼き、おいしいね」
「うん。かわいくて、すごくおいしい」
熱々のたこ焼き。
わたしたちの小さな会話は、幸せそうに花を咲かせる。
「このたこ焼き、どうやって作って――あれ?」
その時、わたしの視界の端を、不思議な印象の猫が一匹歩いていったような気がした。
とんがり帽子をかぶった猫。
だけど、視線を向けた時には、その猫の姿はもう影も形もない。