猫は、その恋に奇跡を全振りしたい
第八章 今日が、終わりの始まりだとしても
猫神祭りの後、不思議な現象が起きた。
お昼休み、わたしたちが1年3組の教室に行くと、鹿下くんは一ヶ月ほど、家庭の事情でお休みしていることになっていたのだ。
「あの、鹿下くん、いますか?」
「克也? しばらく休むらしいぜ。家庭の事情って何だろうな?」
「知らね」
わたしがそう質問すると、近くにいた男の子たちが戸惑った表情で答える。
その男の子たちは、鹿下くんと仲が良かった友達だ。
それなのに、誰も鹿下くん――今井くんが長期に休んでいる理由を知らない。
(誰も、今井くんがいなくなった理由を知らない。もしかしたら渚くんも同じように、一ヶ月後には……)
わたしは嫌な予感を振り払うように、1年3組の教室を後にした。
誰もいない場所で、わたしは心を落ちつかせるために深呼吸をする。
だけど、一向に不安は消えてくれない。
いつもの昼休み。
いつもの教室。
それなのに、鹿下くん……今井くんだけが、最初からいなかったみたいにぽっかりと消えてしまった。
わたしと渚くん以外、誰も今井くんがいなくなった本当の理由を知らない。
以前と変わらない日常に、わたしは戸惑いを隠せなかった。
(一週間後、今井くんは戻ってくる。だけど、今度は渚くんが消えてしまう)
胸の中に広がり続ける不安に、わたしは拳をぎゅっと握りしめてうつむいた。
(……そうだ。渚くんは、もうすぐいなくなる……。もうすぐいなくなるんだ……)
渚くんがいなくなった世界を想像すると、締めつけられるように胸が痛んだ。
心が、否応なしに寂しさに苛まれてしまう。
(終わりなんて、ずっと来なかったらいいのに)
その想いに嘘も偽りもない。
大切に大切に過ごしてきた時間が、心の底から大事になっていた。
時間だけじゃない。
場所も、思い出も。
問われれば思い出せるほどに。
お昼休み、わたしたちが1年3組の教室に行くと、鹿下くんは一ヶ月ほど、家庭の事情でお休みしていることになっていたのだ。
「あの、鹿下くん、いますか?」
「克也? しばらく休むらしいぜ。家庭の事情って何だろうな?」
「知らね」
わたしがそう質問すると、近くにいた男の子たちが戸惑った表情で答える。
その男の子たちは、鹿下くんと仲が良かった友達だ。
それなのに、誰も鹿下くん――今井くんが長期に休んでいる理由を知らない。
(誰も、今井くんがいなくなった理由を知らない。もしかしたら渚くんも同じように、一ヶ月後には……)
わたしは嫌な予感を振り払うように、1年3組の教室を後にした。
誰もいない場所で、わたしは心を落ちつかせるために深呼吸をする。
だけど、一向に不安は消えてくれない。
いつもの昼休み。
いつもの教室。
それなのに、鹿下くん……今井くんだけが、最初からいなかったみたいにぽっかりと消えてしまった。
わたしと渚くん以外、誰も今井くんがいなくなった本当の理由を知らない。
以前と変わらない日常に、わたしは戸惑いを隠せなかった。
(一週間後、今井くんは戻ってくる。だけど、今度は渚くんが消えてしまう)
胸の中に広がり続ける不安に、わたしは拳をぎゅっと握りしめてうつむいた。
(……そうだ。渚くんは、もうすぐいなくなる……。もうすぐいなくなるんだ……)
渚くんがいなくなった世界を想像すると、締めつけられるように胸が痛んだ。
心が、否応なしに寂しさに苛まれてしまう。
(終わりなんて、ずっと来なかったらいいのに)
その想いに嘘も偽りもない。
大切に大切に過ごしてきた時間が、心の底から大事になっていた。
時間だけじゃない。
場所も、思い出も。
問われれば思い出せるほどに。