猫は、その恋に奇跡を全振りしたい
「行ったら、大嫌いになっちゃうよ!!」
「それでも、俺は冬華のことが大好きだよ」
「……渚くん、い……っ」

嫌だよ、と言いかけた唇に、渚くんの唇が触れた。
柔らかいキスの感触だけが確かで。
知らず、頬が熱を帯びる。

「大好きだ。ロスタイムが終わっても……これからの時間を冬華とともに、ずっと生きていきたい」
「ずっと……」

続く言葉に嬉しくなる。
渚くんはロスタイムを迎えても、約束を果たそうとしてくれているんだ。

「ロスタイムはもうすぐ終わる。それでも、やっぱり、冬華は俺にとって特別で……離れたくないんだ。だから、俺はどこにも行かない。冬華のそばにいる」

その言葉が、わたしに前を向く勇気をくれた。
下を向いてしまいそうになるのをぐっと堪えて、わたしは前を見る。
奇跡が終わっても、渚くんと歩む未来が見たいから。
その幸せがほしい。

「もう後悔したくないから、何度でも伝えるよ。冬華、好きだよ」
「わたしも、渚くんのことが大好きだよ」

心の中で伝えるだけでは足りない気がして、口に出す。

「俺、冬華とどうしても離れたくない。こんな状況だけど……」

渚くんは少し躊躇うように言う。

「このまま、冬華のそばにいてもいい?」
「うん、もちろんだよ」

その言葉に、胸が熱くなる。
温かい。
心の奥に小さな温かいものが生まれたみたいに。
このまま、時間が止まればいいのに、と思った。

「渚くん、お願い。これからも、わたしを離さないで」

願いを込めて、ぎゅっと抱きつく。
想いを込めて、伝える。
二人の未来はずっと続くのだと、甘く確かな約束を求めて。

「ああ、絶対に離さない」

渚くんの微笑みに、わたしは嬉しさで胸がいっぱいになった。

「ほら、大丈夫。冬華と同じ温度だ」

渚くんがもう一度、わたしの唇に唇を重ねる。
温もりが、痛いほど、身体に染みた。

……ロスタイムは終わる。

それでも期待してもいいのかな。
これからも、こんな特別な日々が続いていくって……。

ねえ、渚くん。
このまま、デートの続きをしよう。
……そうだ。
まだ、渚くんに誕生日プレゼントを渡していない。
渡したいものはたくさんある。
嬉しい気持ちをたくさん、楽しい笑顔をたくさんくれた彼に、いつだってお礼がしたかった。
同じだけ、できれば、それ以上の嬉しい気持ちや楽しい気持ちを手渡したかった。
この時間はきっと、これからも続いていく。
終わりなど、来ない。
……そう思ってた。

だけど……。
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