最愛から2番目の恋

25 気にするべきは最愛のひと

 先程までの優しい風は、今は様相を変え、身体の芯を冷やした。
 
 ガートルードは、暗い光をたたえたクラシオンの瞳を見つめて。
 その暗さに、一瞬で心が決まった。



「……せっかくのご忠告ですけれど、わたし……
 わたしは、まだ帰りません」 

「あぁ? 何言ってるんだ!?
 婚姻は喪が明けるまで延期になったし、カリスレキアの国王が来るんだぞ!
 クイーネだって、一旦お前を帰国させる、と国王陛下から言われれば、反対は出来ない。
 どうして、素直に……」

「ここには、テレサとメイド2名は連れてきましたが、王都にはわたしのメイドが、まだ3名残っているんです。
 彼女達を置いては帰国出来ない……だから帰りません」

「は? たかが、メイド3人のためにか? お前は馬鹿か?
 …………分かったよ、そんなに言うなら、俺が責任を持って、後からメイド達を帰すから。
 だから、お前は明日帰れよ」


 多分、クラシオンは本気で心配して、逃がそうとしてくれているのだろう。
 叱られて、それが分かる。
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