逆プロポーズではじまる交際0日婚! 〜狙うのは脚本家としての成功とXXX
「蓮さん……」

 小さく名前を呼んでみたけれど、彼は起きない。

 絡まった手が伝えるぬくもりに、鼓動が早くなった。自由なほうの手で彼の髪に触れると、少しくせのある柔らかな黒髪がそっと指に絡まった。

 指先をそっと下ろして、彼の頬に触れる。私よりも高めの体温が指先に伝わり、甘い痺れが胸に広がった。

 この人のすべてが愛おしくて、切なさに似た焦燥感が胸を占めていく。

 この人に、キスしたい──。

 そんな衝動に駆られた瞬間、到着駅を知らせるアナウンスが流れ、私は我に返った。

 周囲の乗客が降りる準備を始める。蓮さんもそれにつられるように頭を上げ、小さく伸びをした。

「ごめん、寝てた。肩、借りちゃってたね」

 少し赤くなった目で、私を見る。そのまっすぐな視線を受け止めきれず、私は電光掲示板に目を移した。

「まだ着いてないよ。でも、あと1時間もかからないくらい」

 とりあえず、蓮さんを襲わなくて良かった。理性を失ってキスするなんて、もはや犯罪行為だ。
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