逆プロポーズではじまる交際0日婚! 〜狙うのは脚本家としての成功とXXX
 クライマーが振り返り、動画を巻き戻すようにホールドを伝って地面に降りてきた。

 そして、汗ばんだ顔に満面の笑みを浮かべながら「薫!」と叫び、両手を広げて迎えてくれる。私はその腕に飛び込んだ。

 前に会った時より少し痩せた気がするけれど、筋肉とシャキッと伸びた背筋は健在だ。私はもう一度、おばあちゃんを強く抱きしめた。

「薫、おかえり! 元気そうで何よりだよ」

「今年はまだ、ウォールを片付けてなかったんだね」

「雪が降る前にエイちゃんを呼んで、片付けてもらうつもりだよ」

 エイちゃんはこの地域の頼れる大工さんで、冬支度の一環としてボルダリングウォールの撤去もお願いしている。

 おばあちゃんが私の頬を両手で挟み、おでこをくっつけて言った。

「よく帰ってきたねぇ」

 その愛情たっぷりの挨拶に、私は故郷に戻ってきたことをしみじみと感じた。そうだ、蓮さんを紹介しなきゃ。

「蓮さん、うちの規格外おばあちゃん、70歳です。おばあちゃん、こちらが……出雲蓮さん」

 家族の前で「婚約者」と紹介するのは……少し照れくさいし、良心が痛むので、省略することにした。

「はじめまして。薫さんとお付き合いさせていただいております、出雲と申します」
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