逆プロポーズではじまる交際0日婚! 〜狙うのは脚本家としての成功とXXX
「……どうしたの?」

「卒業式以来だなって思ってさ」

 和樹は手を離さない。

「告白してくれたのに、何も始まらないまま終わって……。薫も、俺に言いたいこと、あるんじゃないの?」

 その目が、なんだか知らない人のようで、少し怖くなる。

「気にしてないし、言いたいこともないから、手を離して。これ、『壁ドン』だよ!」

 冗談めかして笑おうとしたけれど、和樹は動かなかった。恐怖と困惑が一気に押し寄せてきて、私は体を強ばらせる。

 そのとき──肩に力強い手がかかり、私は後ろへと引き戻された。誰かの体にぶつかる。振り返ると、険しい表情の蓮さんがいた。

「薫は、嫌がってる」

 その声は低く、冷静で……それでいて、揺るぎない意思が宿っていた。

 和樹は驚いたように私を見て、尋ねる。

「薫……この人、誰?」

 ──婚約者です。

 本当なら、その一言で済んだはずだった。

 けれど私は、背中越しに蓮さんの体温を感じた瞬間、もう嘘がつけなかった。
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