逆プロポーズではじまる交際0日婚! 〜狙うのは脚本家としての成功とXXX
 蓮さんは小さく笑ってそう答えると、丁寧に足を運びながら、ゆっくりと降りてきた。その動きはしなやかで力強くて──まるで、美しい野生動物みたいだった。私は彼から目を離すことができなかった。

「思ったとおり、蓮くんはスジがいいね。あと一週間、私がつきっきりで特訓すれば、北岳バットレスなんて鼻歌まじりで登れるよ」

「いやいや、さすがにそれは……」

 降りながら苦笑する蓮さんに、おばあちゃんがいたずらっぽく笑う。

「蓮くん、私の特訓はね、戸隠の忍者養成所よりもスパルタだからね。生きて帰れたら、それだけで伝説(レジェンド)!」

「そういうことなら……遠慮しておこうかな」

 地面に降り立った蓮さんは、肩を回しながら深呼吸した。

「すごく楽しかったです。おばあちゃん、ありがとう」

 全身の筋肉を使ったばかりの蓮さんは、スーツのときよりもずっとたくましく見えた。無駄のない動きと、余分なものを削ぎ落としたエネルギーが、全身からにじみ出ているようだ。

 少し乱れた呼吸にあわせて上下する肩、喉元をつたって流れる一筋の汗。その姿は、言葉にならないほど色っぽくて──私はただ、息を呑んだまま立ち尽くしていた。
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