逆プロポーズではじまる交際0日婚! 〜狙うのは脚本家としての成功とXXX
 やがてお母さんが戻ってくると、蓮さんはさりげなく彼女の隣に立ち、「お湯が沸くまで、手伝うよ」と声をかけた。

 お母さんが冷蔵庫を開けようと背を向けた瞬間、私は思わぬ光景を目にした。

 蓮さんが、さっきの不安げな眼差しで──お母さんの背中に、そっと顔を近づけたのだ。まるで……匂いを確かめるように。

 ……なに、今の?

「蓮、これを取り分けてね。薫さん、プディングは温かいのと冷たいの、どちらが好き?」

 お母さんが振り返ると、蓮さんはすぐに姿勢を戻した。

「……実は、食べたことがないんです。どちらがおすすめですか?」

 なるべくいつも通りの声で、私はそう答えた。

「夏は冷たいのがいいけど、今の季節なら、温めたほうがカスタードの香りが引き立っておいしいかな」

 蓮さんの声は聞こえているのに、頭には入ってこない。私の思考は、ビストロで友記子が言っていた妄想話に侵食されていた。

──その母親は、実は男の年上の恋人で……

 まさか、そんな……でも、もし継母だとしたら?

「薫? 温かいのにする?」

 蓮さんがのぞき込むように声をかける。

「あ、うん、温かいのをお願いします」

 蓮さんは「了解」と言って、慣れた手つきでプディングを取り分け、予熱していたオーブンに入れた。
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