逆プロポーズではじまる交際0日婚! 〜狙うのは脚本家としての成功とXXX
 さっき、お母さんの背中にに顔を近づけていたのは……お酒を飲んでいないか、確かめるためだったのか。

 そのとき、蓮さんの手が、私の頬に触れた。

「薫が泣くことじゃない」

 その言葉で、私は初めて、自分が泣いていることに気づいた。

「ごめん……泣きたいのは、蓮さんの方なのに」

 蓮さんはゆっくり微笑んで、私をやさしく見つめた。気づけば私は、手を伸ばしていた。

「蓮さん……抱きしめてもいい?」

 その言葉を言い終える前に、蓮さんが私を強く抱き寄せた。彼の頬が、私の髪にそっと触れる。

 蓮さんの痛みと寂しさが少しでもやわらぐように、私は精いっぱいの力で、彼を抱きしめ返した。

──いつの間にか風はやみ、海も穏やかになっていた。

 腕が少し緩んで、私は顔を上げる。

 蓮さんの頬を伝っていた涙に気づいて、私はそっと指先で拭った。

「ありがとう。……おばあちゃんが言ってたんだ、薫なら全部受け止めてくれるって」

 一瞬、何のことかわからなかったけれど、すぐに思い出した。長野の最終日、蓮さんがおばあちゃんにドナドナされた日だ。

 だけど──
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