逆プロポーズではじまる交際0日婚! 〜狙うのは脚本家としての成功とXXX
 今日の午前中はあんなに洗練されたスーツ姿だったのに、ネクタイを緩めようとしたのだろうか、今は襟元が少し乱れて色っぽい。なんだか、胸の奥が少し熱くなるのを感じた。

 私はマライカバブをカウンターに置いてから、ソファの前に行き「蓮さん」と呼びかけた。よっぽど疲れているのだろうか、小さな寝息が聞こえてくる。

 ──そうだ、私は自分のことばかり考えていたけれど、考えてみれば蓮さんの方が大変な状況だ。

 このタイミングで脚本を一からやり直しなんて、ただでさえ周りから嫌がられそうなのに、指名されたのは航よりさらに無名な私なのだ。各所に調整も必要になるのだろう。

 涼しい顔をしていたけれど、疲れが溜まっているのかもしれない。

 眠っている蓮さんが、首を動かし、少し苦しそうに襟元を広げようとした。私はネクタイをゆるめてあげようと、彼の胸に触れた。

 その時、蓮さんがゆっくりと目を開けた。まだ眠りの淵にいるようで、焦点が合っていない。

 風邪引いちゃうよ、そう言おうとしたとき、蓮さんの腕が私の肩にまわり、強い力でぐっと自分の方に引き付けた。

 彼の顔が急に近づいてきたかと思った瞬間、蓮さんの唇が私の唇に重なった。

 一瞬、何が起こったのか分からなかった。
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