逆プロポーズではじまる交際0日婚! 〜狙うのは脚本家としての成功とXXX
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 シャワーの温度を、いつもより高めに設定した。

 熱いシャワーで頭をスッキリさせようとしたけれど、昨夜のことが何度も思い出されてしまう。顔が熱くなるのを感じて、思わず手で覆った。

 早朝5時。蓮さんはまだ眠っている。私はバスルームを出て、熱いシャワーでダメなら次は濃いカフェインに頼ろうと、コーヒーを淹れるためにキッチンへ向かった。

 キッチンカウンターには、昨夜買ったマライカバブのテイクアウトの袋、その足元には私のエディターズバッグが置かれたままだ。

 テイクアウトを冷蔵庫に入れるついでに、ミネラルウォーターを取り出してグラスに注ぐ。その時ふと、バッグから昨日広瀬さんに渡された、4枚のプロットの用紙が見えていることに気がついた。

 広瀬さんの声が蘇る。

 ──主人公の絶望を描くために何をすべきか、自分で考えて決めなさい──

 そうだった。

 両手で顔を覆い、天井を見上げる。昨夜、家に帰る時、こんなに幸せで絶望が描けるのかと思い悩んでいたのに……さらに幸せになってどうするんだ、私。
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