逆プロポーズではじまる交際0日婚! 〜狙うのは脚本家としての成功とXXX
 私は冷たいグラスを握りしめたまま、ダイニングチェアに腰を下ろした。もう時間もない。今はシナリオに集中しなければならないときだ。私は覚悟を決めたはず……なのに。

 蓮さんの寝室に向かい、そっと覗き込む。彼は穏やかな寝息を立てて、静かに眠っていた。

 その瞬間、これまで感じたことのないほどの愛おしさが一気に押し寄せ、私は思わず後ずさってしまった。

 この感情に飲み込まれたら、私はどうにかなってしまうんじゃないかと、怖くなった。

 ──蓮さんが起きる前に、出ていこう。

 コーヒーは諦めて、私は荷物が置いてある主寝室へと向かった。デイバッグに着替えや日用品を詰めていく。意外とコンパクトに収まったのを見て、ラフな服で通勤できる会社でよかったと思った。

 用意が整ってから、またキッチンへ戻った。メモ用紙を前に、なんて書こうかと少し迷う。

「旅に出ます」は違うし、「探さないでください」も心配かけるし、「お世話になりました」は絶対にダメだ……。
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