逆プロポーズではじまる交際0日婚! 〜狙うのは脚本家としての成功とXXX
 その余韻に浸っているうちに、また涙が滲んでくる。だけど、それは悲しいだけではない涙だ。

 ここ数日間で、ジェットコースターみたいな感情の揺れを経験したけれど、何だか、今までよりも景色がいい場所に着地できそうな気がした。

 私は椅子に座り直し、ラップトップを開いた。広瀬さんは元の席に戻り、再び小説を読み始めた。

* * *

 自分がどこにいるのかさえ忘れるほど、私はキーボードを叩くことに没頭していた。しかし、突然スマホから音楽が流れ、意識が引き戻された。

「はい、広瀬です」

 普通の着信音だったら集中力が途切れることはなかったかもしれないが、流れてきたのがオズの魔法使いの「虹の彼方に」だったので、思わず広瀬さんの方を振り返った。とても好きな曲だ。

 私はまぶたを軽くこすり、ついでに小休止しようと、空になったカップにコーヒーを注ぐために立ち上がった。

「なるほど、ギャランティの問題でも、原作イメージの問題でもないと……。それなら春木先生は、どのような条件であれば原作をご提供いただけるとおっしゃっていますか? 春木先生と、直接お話をさせていただくことはできませんか?」
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