逆プロポーズではじまる交際0日婚! 〜狙うのは脚本家としての成功とXXX
 話している内容から、これは春木賢一朗作品の映像化に関する交渉だと察した。相手は春木が唯一関わっている大手出版社の編集者、譲原さんだろう。

「わかりました。でも、まだ諦めてはいませんので。またご連絡いたします」

 通話を切った後、広瀬さんは深いため息をついた。額に手を当てながら、考え込むように視線を一点に向ける。その表情には苛立ちと同時に、攻略困難な相手へ挑戦するときの高揚感が見え隠れしていた。

 しばらく沈黙が続いた後、彼女は小さな声でつぶやいた。

「春木賢一朗って、一体何者なんだろう……。お金にも名誉にも一切反応しないなんて」

 どう答えるべきかと迷っていると、突然スマホからLINEの通知音が鳴り響いた。画面に表示された名前を見た瞬間、胸が締め付けられるのを感じた。

 蓮さんからだ。

『お疲れ様です。今日、会社近くのカフェで作業していると聞きました。もし良かったら一緒に昼食をどうですか?』

 既読が付いてしまった。返事をしなければならない。

『ごめんなさい、今日は広瀬さんと一緒にランチをするつもりです』
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