逆プロポーズではじまる交際0日婚! 〜狙うのは脚本家としての成功とXXX
 知里さんが言っていたように、蓮さんのことを好きだった気持ちは、誰にも奪えない。

──たとえ、蓮さん自身にも。

「薫……」

 蓮さんが、戸惑ったように私の名前を呼ぶ。

 私は指先で涙を拭った。よかった、続きの涙は出てこない。──もう、蓮さんを困らせたりしたくないから。

 彼に恋する前の自分を思い出しながら、私は明るく笑った。

「じゃ、知里さんに怒られちゃうので、そろそろ行くね。脚本、頑張って書くから」


* * *


 知里さんは、エレベーター横に置かれたソファで私を待っていてくれた。

「すみません、お待たせしました」

「……大丈夫だった?」

 私は頷いて答える。

「これ以上ないくらい、大丈夫でした」

 知里さんは、何か言いたげな顔で私を見ていたけれど、私の笑顔が揺るがないのを見ると、ゆっくりと頷いた。

「作業前にどこかでランチでもどう? 今日は私が奢るわ」

 今日、この人がいてくれて良かったと思いながらも、私は軽く首を振る。

「さっき、自分を励ますためにベーグルサンドを買ったんです。今日は一人でベーグルサンドと語らうことにします」
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