逆プロポーズではじまる交際0日婚! 〜狙うのは脚本家としての成功とXXX
 彼女は顔の前で手を合わせ、少し申し訳なさそうに言った。

「それは謝る、ごめんなさい。でも、一番辛い時間は乗り越えていたし、あの時のあなたは、ものすごく研ぎ澄まされていた。だから、そのままの強さでシナリオを終わらせてほしかったの」

 友記子と航も事前に知っていたようで、私と目が合うと、申し訳ないという仕草を見せた。

 怒るべきなのか、喜ぶべきなのか……。私の感情は入り混じり、何が正しいのか分からなくなっていた。思わず両手で顔を覆い、深いため息をついた。

「薫」

 いつの間にか、蓮さんが私の前に立っていた。ああ、そうか。蓮さんは何ひとつ悪くなかったのに、私は……。

「ごめんなさい、私……蓮さんに、ひどいことを言ってしまった」

 蓮さんは安心したように、いつもの温かい笑顔を見せてくれた。──私が大好きな、穏やかで優しい、陽だまりのような笑顔。

 彼は、スーツのインサイドポケットから1枚の紙を取り出し、それを広げた。この間、私が書いた婚姻届けだった。

「こんなことを、君に提案するべきじゃなかった」

 彼は静かにそう言って、それを真ん中から引き裂いた。
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