逆プロポーズではじまる交際0日婚! 〜狙うのは脚本家としての成功とXXX
 顔が熱くなり、慌ててコーヒーを飲むふりをする。またしても緩んだ表情が見られたかもしれないが、もういいや。気づかないふりでやり過ごそうと決めた。

「いえ、そういうのは……全然、まだです」

 知里さんはしばらく無言で私を見つめたあと、柔らかく笑った。

「あなたって、思いつきで大胆に生きているように見えて、そういうところは意外と慎重派よね」

 ……長野の明日香ちゃんにも、友記子にも言われた。どうやら知里さんにも見抜かれてしまったらしい。

「まあ、あなたの実力なら、フリーになったほうが絶対にいいわ。倉本さんにはもう話したの?」

「いえ……でも、今週中には話そうかと思っています」

 私がお茶を濁すと、知里さんは「ああ、横領の件で言うタイミング逃したか」と、サラリと口にした。

 私は目を見開いた。横領のこと……知里さんがどうして?

「何驚いてるの。同じ業界内なんだから、噂は自然と耳に入ってくるわよ。まあ、それほど多額じゃないし、会社は大丈夫だろうって聞いたわ。倉本さんが怒り狂っていることを除いては」

「噂……そういうもの、なんですね」
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