逆プロポーズではじまる交際0日婚! 〜狙うのは脚本家としての成功とXXX
 知里さんは食べ終えたパイの小皿をテーブルの端に寄せ、少し真面目な表情になって続けた。

「でも、あなたのおかげで、マンサニージャには世界的ストリーミングサービスで配信される『記憶の片隅にいつもいて』という大きな実績ができたわ。これからも依頼はどんどん増えるはず。あなたが独立しても、会社は大丈夫よ」

 そして、思い出したように付け加える。

「あなたが好きな『ワケあり女優さん』と『小鳥』の脚本は、倉本さんに任せることになっちゃうのが、ちょっとだけ残念ね」

「倉本先生の脚本は大好きですから、ファンとして楽しみにします」

 知里さんは、元気づけるように拳で軽く私の肩を叩き、「春木賢一朗の小説をドラマ化するときには、あなたに任せるから」と言って立ち上がった。そしてカシミアのコートを羽織り、伝票を手にする。

「午後は面接の立ち会いがあるから、もう行くわね。あなたの誕生日には出雲くんに奢ってもらったから、今回は私に払わせて」

 ──面接、か。

 何だか申し訳ない気持ちになって、私は知里さんを見た。

「……すみません」

「なに、らしくないわね。こういうときは『すみません』じゃなくて『ありがとう』でしょ?」

 知里さんの言葉に、私は少し罪悪感を覚えながらも頷いた。

「ありがとうございます。ご馳走さまです」
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