逆プロポーズではじまる交際0日婚! 〜狙うのは脚本家としての成功とXXX
 祐介はトルティーヤで具材を包み、熱々のまま頬張ると、「なんだこれ、初めて食べた。うまいな!」と目を輝かせた。さらに、キリッと冷えたライム入のテカテビールをひと口飲んで、満足げに天井を仰ぐ。

「『良き仲間とともに、良きワインを傾け、良き食事を味わう。それは人生における、最も洗練された悦びのひとつだ』ってマイケル・ブロードベントは言ったけど、それ、ビールとメキシコ料理と姉ちゃんにも当てはまるな」

 何を食べてもおいしい日だった。私は気を良くして、祐介のために、アボカドが濃厚なグワカモレとチーズがたっぷり載ったエンチラーダも追加で注文した。

 デザートのトレス・レチェスが運ばれてくると、祐介が不意に口を開いた。

「姉ちゃん、アガサ・クリスティっているじゃん。晩年は毎年、クリスマスが近づく頃に新刊を出してたらしいんだ。『クリスマスにクリスティを(ア・クリスティ・フォー・クリスマス)』ってね」

「へえ、そうなんだ」

 パイナップルのエンパナーダを切り分けながら、私は頷く。
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