逆プロポーズではじまる交際0日婚! 〜狙うのは脚本家としての成功とXXX
 心臓を掴まれるような感覚がした。あのとき、私と祐介のほかに、そこにいたのは──。

 今にも泣き出しそうな顔で、それでも無理に笑おうとしながら、祐介は続けた。

「姉ちゃんが帰ろうとしたとき、俺も一緒に席を立ったよね。エルネストEPの社風について探っているのを、蓮さんたちに言わないでくれって頼みに行くために。あのとき、俺、譲原さんへの最初のメールを打っている途中だった。春木賢一朗の名義で」

 胸がざわつくのを感じながら、私は黙って祐介を見つめた。

「席を立つとき、俺、パソコンの画面を半分しか閉じてなかった。開けば、そのまま操作できる状態だった。……たぶん伊吹はメールを見て、俺が春木であることに気づいたんだと思う。それで、エアドロップか何かを使って、原稿のデータを自分のスマホに……送ったんじゃないかな」

 祐介は唇を強く噛み、テーブルの上で握りしめた拳に力を込めた。

「──俺が、ちゃんと管理していれば……全部、俺の責任だ」

 その瞬間、古美多で覚えた違和感が鮮明によみがえった。そうだ──祐介が「噛みまくっていたのに、なぜかオーディションに通った」と話したとき、伊吹くんは急に青ざめ、理由を聞かれても口を閉ざしたままだった。
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