逆プロポーズではじまる交際0日婚! 〜狙うのは脚本家としての成功とXXX
「いいよ。蓮さんも私も普段からドアを開けたままにしてるのは、用があれば入ってという意味だから」

 その信頼が、もう壊れてしまったかもしれないことについては、あえて触れなかった。祐介だって、言わなくてもきっとわかっているはずだ。

 私たちはしばらく無言で座り、時折ほうじ茶ラテを口に運んだ。沈黙は不思議と重くはなく、私たちの心をそっと包み込んでくれるようだった。

 湯気とともに広がる芳ばしい香りが、静かな空気に溶けていく。私はそれを、ぼんやり眺めていた。

 やがて、祐介がぽつりと口を開いた。

「姉ちゃん、俺、今、立ち上がる気力がなくて……。リビングにある俺のボストンバッグ、取ってきてくれる?」

 私は「うん」と言って立ち上がり、彼が高校時代から使い続けているバッグを持ってきた。

 祐介は「ありがとう」と言って、ゆっくりとファスナーを開ける。そして、中からクリスマス柄の包装紙に包まれた箱を取り出した。

「これ、姉ちゃんと蓮さんにプレゼントしようと思って用意したんだ。開けてみて」

「ありがとう。でも、蓮さんと一緒のときのほうが……」

 そう言いかけると、祐介は微かに笑った。その笑みはどこか力なく、諦めにも似ていた。

「今のこの状況で、蓮さん、俺からのプレゼントなんて受け取ってくれると思う?」

 私は言葉を失った。
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