逆プロポーズではじまる交際0日婚! 〜狙うのは脚本家としての成功とXXX
「いいんです。知里さんが、どれだけ本気で春木作品を映像化したかったか……ちゃんと伝わってますから」

 知里さんは私の手に自分の手を重ねて、ほんの一瞬だけ、ぎゅっと強く握る。

 そして、すぐに手を離し、何事もなかったように正面を向いた。

 強気で、不器用で、でも温かい──そんな知里さんが戻ってきてくれた気がして、胸に灯りがともった。

「で、出雲くんはいつから気づいていたのよ?」

 知里さんが問いかけると、祐介も視線を上げ、続けて言った。

「それ、俺も知りたいです。やっぱり、マーク・トウェインの引用(クオート)でバレちゃいました?」

「本の表紙に毎回こっそり入れてる、あの言葉?」

 私が聞くと、祐介は頷いた。

「そう。前の会社を辞めた理由を聞かれたとき、蓮さんに話したでしょ。『二十年後に後悔したくないから、安全な港を出て、大海原を進みたかった』って」

 祐介は、照れくさそうに頭をぽりぽりとかいた。

「春木と俺を結びつけたくなくて、わざと口語にしたんだよ。クオートの最後の部分──"Explore.(漕ぎ出せ) Dream.(夢を抱け) Discover.(未知を拓け)"──は言わなかった。だから蓮さんがその言葉を口にしたときは、正直ちょっと焦った」

 その瞬間、私の中に記憶がよみがえった。ダブルデートで訪れたビストロで、彼はこんなふうに言っていた。
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