逆プロポーズではじまる交際0日婚! 〜狙うのは脚本家としての成功とXXX
──春木先生は、誰も気づかないような場所に、マーク・トウェインの同じ言葉を刻み続けている。それが彼にとって、特別な意味を持つ言葉なのだと思う──

 ……じゃあ、あの時点で、すでに気づいていたってこと?

 けれど蓮さんは、やんわりと首を振った。

「いや、あのクオートはアメリカではポピュラーだからね。その時はまだ、祐介くんってロマンチストなんだな、って思ったくらいだったよ」

 祐介は目を丸くして、ぽかんと蓮さんを見つめた。

「じゃあ、いつ……わかったんですか?」

「もしかしてと思ったのは、薫が、絶対に何かを知っているのにまだ話せないと言ったとき。そして確信したのは──昨日の夜だよ。僕が作った肉じゃがを食べて、薫が言ったから。『おばあちゃんとまったく同じ味』って」

 そう言って、蓮さんはスーツの前をそっと開いて内ポケットに指をすべらせると、何かを取り出した。

「あ、祐介くん。きみの自家製味噌と万能だれ、大さじ1ずつ使わせてもらったからね」

 祐介は、一瞬目を泳がせてから顔を上げた。そして──

「あーーーーっ!」

 唐突な大声に、隣にいた私はびっくりして、思わず身をすくめた。

「まさか……蓮さん、あの記事、持ってたんですか?」

 蓮さんはおかしそうに笑いながら、さっきポケットから出した紙を、丁寧に広げてみせた。
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