逆プロポーズではじまる交際0日婚! 〜狙うのは脚本家としての成功とXXX
 私が声をかけると、彼女は両手で頬を覆いながら、信じられないという顔で小さくつぶやいた。

「あの、洗練された大人の色気をまとう須賀さんが……あんな純度100%のキュンの暴力みたいな小説を綴っていたなんて……」

 え、それって……まさか。

「薫、なんだか……前よりドキドキしてきたんだけど。どうしてかしら、私……」

 私はおそるおそる問いかける。

「知里さん、それ……ギャップ萌えでは?」

 彼女は、今度こそ耳まで真っ赤になりながら、噛み締めるように言った。

「これが……ギャップ萌え……」

 その顔を見て、私は胸を撫で下ろした。

 ああ、心配いらなかったんだ。知里さんはちゃんと須賀さんに恋していた。……春木賢一朗ではなく。

「ってことは広瀬さん、もしかして、俺にもギャップ萌えしちゃってます?」

 祐介が調子に乗って割り込んできた瞬間、知里さんは一拍置いて、きっぱりと言い放った。

「むしろ逆よ。完全にギャップ()えね。春木作品をこれからも愛したいから、あなたが春木だってことは思い出させないでちょうだい」

「ええ⁉︎ 広瀬さん、それ、なかなか酷くないですか⁉︎」

 知里さんは静かに顎を引き、腕を組みながら言った。

「で、祐介くん。『春木』があなたの苗字の『椿』から来てるってのは分かったけど、『賢一朗』って?」

 祐介はきょとんとした顔で、当然のように答えた。

「え? 賢くて、まっすぐで、朗らかって……まんま俺じゃないっすか?」
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