指輪
不思議と、
高校を出たあとのあなたのことは、誰も語らなかった。暗黙の了解のように。
あなたのまわりでは、誰もが明るく笑っていたのに。
(わたしも)。
いたのに。

「か、変わらないんだね」
戸惑いがそのまま言葉になった。
「変わったよ」
(どこが)
声も、姿も、話し方も、
ちょっとななめにひとを見るところも。

「わ、わたしは変わったよね」
「変わったって言ってほしいの?」
「!!」

「変わったよ」
あなたは、何でもないように笑った。
「変わったように見えないかもしんないけど、変わった」
「ど、どこが」

「老いたよ」

無情な現実を突きつけられた気がした。
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