指輪
ふたりで坂道をゆっくりと降りる。駅へと向かう。
ときめきがあふれてあふれて胸のうちで波打っている。
パートナーへの申し訳なさを、左こぶしに握りしめた。
気温は、さらに下がった。なのに、なぜか聞けない。
- 今度、いつ会える?

ベッドの中では溶け合っていたのに。

スクランブル交差点で人なみに揉まれて、夢から押し出されるようにハチ公口にたどり着いた。
消えていた。
あなたは、
雑踏に溶けるかのように、いなくなっていた。

わかっていたはずなのに、泣けてきた。
私は、渋谷駅まであと一歩、と言うところで、涙をこらえて唇を噛みしめていた。
わかっていた。
高校の頃からわかっていた。

わたし、あなたが好き。
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